語林講座 四字熟語編  
 
          文・樋口千夏      
     
もどる 八面玲珑

 
八面玲珑(はちめんれいろう)、この言葉を知っている方は少ないでしょう。

 玲珑は、玉の音や精致な形を形容する言葉。日本制の小物を手にとっている中国人はよく「真是小巧玲」とうなづくのです。
  
 八面玲瓏は、中国の宋の马煕(ばき)の詩『開窓看雨』「八面玲珑多得月」より。部屋の八方から月の光が見えること、つまり周りを見渡せることを指します。
    
 日本では、有名な将棋棋士・羽生善治氏は、著書『決断力』の中で「八面玲瓏」という言葉を言及しました。氏はこの言葉が好きで、色紙に『玲瓏』と書いているそうです。

 中国では、少なくとも現代では、八面玲瓏は誰に対しても如才なくふるまうさま、つまり日本語の「八方美人」の意味に転じました。ちなみに、「八方美人」という表現は使いません。
  
    他这个人八面玲珑,从来不得罪人。
      /八方美人の彼は、人の機嫌を損なったことは一度もない。 
 
 この場合は、日本語の「八方美人」とニュアンスが同じです。そういう人は、きっと自分を曲げたり、ごまかしたりしていただろうと思われ、よく受け取られないです