語林講座 四字熟語編  
 
          文・樋口千夏      
     
もどる  乐 

自得其乐】    

この「楽」は名詞です。つまり「楽しみ」です。
「他人の目を気にしないで自分なりにその楽しさを得る(味わう)」という意味です。
他人にはわからないかもしれないが、自分なりに満足しているというときに使います。
趣味について話すとき、少し謙遜しながら話す人に奥ゆかしさを感じさせられますよね。

我喜欢唱歌,但唱得不是跑调就是忘词,不过我还是自得其乐。
 /歌うのが好きですが、音程が外れたり歌詞を忘れたりします。それでも自分なりに楽しんでいます。

【乐此不疲】 
「乐」は動詞です。つまり「楽しむ」です。
「このことを楽しみながらやっていて、疲れを感じない」という意味です。
どんな場合に使うかといいますと、大変そうなことをこつこつと続けている場合です。

田中最近迷上了做安土城模型,一到週末就废寝忘食的,乐此不疲。
/田中さんはこの頃、安土城の模型作りに夢中で、週末ともなれば寝食を忘れるほど嬉々として続けている

【乐不思蜀】   

ご存知、三国志の話です。
蜀の国(四川省にある)が滅びた後、劉備の息子が魏の国の首都・洛陽に遷されました。
「洛陽の生活はどう?」と聞かれたところ、
「此间乐、不思蜀」(この地での生活が楽しく、もう四川のことを忘れた)と答えました。
彼は敵国での生活を楽しみ、故郷を忘れてしまうほどの馬鹿息子とされています。

他到了美国以后,乐不思蜀,忘记了家乡。
/あの人はアメリカに行ってから、故郷のことを忘れてしまった。

ところが最近の旅番組では、この言葉の「楽しい」という側面に重きを置き、よく次のようにも使っています。

小岛上的风景让人乐不思蜀。
/小さな島の風景は日常を忘れさせる。

【天伦之乐】

この「乐」は名詞です。
「天伦」とはもともと「自然の秩序」という意味です。
そして親兄弟の序列から、ここでは家族の意味に転じて、
この言葉は「一家団欒の楽しみ」という意味となります。
ただし、祖父母から孫の代まで3世代以上が含まれる場合に使います。

父亲退休了,如今毎天在家里逗孙女儿玩,享受着天伦之乐。
/父は退職し、今は毎日家で孫娘と遊び、一家団欒の楽しみを味わっている。

【先忧后乐】

この成語の出典は、宋代の官僚文人範仲淹(はんちゅうえん)の『岳陽楼記』からです。
原文は「先天下之忧而忧、后天下之乐而乐」(天下の人々より先に憂い、天下の人々の後に楽しむ)。
転じて、先に苦労・苦難を体験した者は、後に安楽になれるということです。
高校の国語テキストにも出てくる文章なので、中国でよく知られています。
日本の三大名園のひとつ「後楽園」(岡山)の名で日本でもおなじみですよね。

もちろん、小石川後楽園(東京)という名前もここから取ったものです。
名付けたのは、中国から来た朱瞬水という儒学者です。
ちなみに、この朱瞬水という人は水戸黄門様にラーメンのおいしさも教えたそうです。

人要有“先忧后乐”的意识,不要贪图眼前的快乐。
/人というのは、「先に憂え後に楽しむ」という意識が必要だ。目の前の楽しみを貪ってはいけない。

【知足常乐】

贅沢をしようとしたり、他人を羨んだりせず、「現状に満足していれば常に楽しい・幸せだ」という意味です。

他虽然收入不多,可是从来也不与人比,过着知足常乐的生活。
/彼は収入はあまり多くないが、今までも人と比べるようなことはせず、満足して暮らしている。