語林講座 四字熟語編  
 
          文・樋口千夏      
     
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【走马看花(走马观花)】

現代中国語では、「走」は歩く意味ですが、古代中国語では「走る」意味です。
また、「走」は「馬」の前に置き、「させる」という意味を持たせる使い方も存 在しています。
「走马」は「馬を走らせる」となります。

他の例といえば、

「勉強=無理する」 たとえば、
 他勉強地同意了。  /彼はいやいやながら賛成した。   

名詞の前に置くと、「勉強=無理させる」。 たとえば、
  不要勉強他。
  /彼に無理強いさせないで。   

「走马看花」の出典は唐・孟郊の《登科後》の一節です。
「春风得意马蹄疾,一日看尽长安花(春風に意を得て馬蹄疾し、一日に看尽くす長安の花)」

合格者掲示板に自分の名前を見つけ、「やった!」と勢いよく馬を走らせる姿が目に浮かびます。
この詩で描写しているのは、科挙試験に合格した優等生たちの嬉しくてたまらないわくわくした気持ちです。

現在、「走马看花」は「おおざっぱにものを見る」という意味で使われます。主に旅行のときに使います。
たとえば、
  這次去香港,自由活动的时间很少,我只好走马观花地看看。
  /今回の香港旅行は自由時間が短くて、ざっと見ただけだった。

「もっとゆっくり見たかったのだけど・・・」 典拠の一節に描かれた人とは随分違う気持ちですよね。

【走马上任】

昔、官僚が赴任地にいくときは、馬を乗り、または籠に座って担いでもらいました。
ここから赴任のことを「走馬上任」と言うようになりました。

  5名海龟博士走马上任。
  /海外から帰ってきた5人の博士が赴任した。
  (亀と帰と発音が同じなので、「海归」(帰国者)を「海龟」と呼ぶ)

ただし、官職につく場合のみ使い、「単身赴任」の場合は使えません。

【走马灯】

走馬灯は、影絵が回転しながら映るように細工された灯籠(灯篭)の一種です。
日本では人が亡くなる前の記憶のリピート現象を喩えるときに多く使いますが、
中国は死亡の前でなくても使います。

  电视里看过的万里长城、北京奥运等的画面,也像走马灯一样在脑海中浮现。
 /テレビで見た万里の長城・北京オリンピックなどの画面が走馬灯のように頭の中に浮かんだ。

また、ぐるぐる回ることから、目眩しい変化を喩えるようにもなりました。
    日本首相頻繁换人就跟走马灯一般,根本就不用记住他们的姓名。
  /日本の総理大臣は走馬灯のように頻繁に換わるから、彼らの姓名を覚える必要はまったくありません。