語林講座 四字熟語編  
 
          文・樋口千夏      
     
もどる 似曾相识


かつて見たことがあるようだ、という意味ですね。
この言葉は以下の詩の一句です。  
 
无可奈何花落去  
似曾相识燕归来     
小园香径独徘徊     

花が散り落ちるのはしかたがない   
昔見たつばめがまた戻ってきた  
この小さな庭の花の芳しい小道を何となく一人歩いている

季節がめぐり今年も春になり、去年も軒下に巣を作ったつばめがまた戻ってき た!
春の到来をおだやかに喜ぶ気持ちが伝わってくるように感じます。

典拠と同じような意味で現在も以下のように使います。  

似曾相识的场景。   
/まるで以前見たことがあるような場面だ。

以前にも見たことがあるという感覚、みなさんも覚えたことがあるでしょうか。  

2/3的成年人至少有过一次這种似曾相识的感觉。   
/成人の2/3は少なくとも一度は“似曽相識”の体験がある。

この文章は何のことを言っているかおわかりになりますか。
ここでいう「似曽相識」とは、「デジャブ」のことです。  

中国人与韩国人着相似的东方面孔,毎到一处他看到的都是似曾相识的熟悉的臉,  
這让他感到格外亲近。   
/中国人と韓国人は東洋人同士、似た顔がある。どこに行っても彼が目に
するのは全てよく見覚えのある顔つきで、とりわけ親しみを感じた。

単に見たことがあるというニュートラルな意味にもとれますが、文章全体の文脈
から「見たことがあって懐かしい」という好感も読み取れると思います。  

还有一些作者在艺术的表达上无欲无求,看到的是一幅幅似曾相识的老面孔,  
读起来枯燥无味。   
/作者のなかには芸術表現において向上心が皆無な者もいて、その作品は代
わり映えのない体裁で、読んでみても味気ない。

過去の自分を壊して新しいものを生み出そうとする意欲もなく、お決まりの小説 ばかりを書く・・・
以前にも見たことがある→前作を超えていない→「代わり映えがしない」、とよく ない意味でも使われます。