樋口 |
1年で基礎ができて(初級)、それから表現を磨いていって(中級)、では上級クラスにはどんな人がいますか?
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林 |
大きく分けて2種類のキャリアを持つ人たちがいます。
ここでゼロから始めて7~8年で上級になった人・途中、留学して戻ってきた人、
それから中国での留学・生活を2~3年したことがある人・大学で中国語を専攻した人です。 |
樋口 |
上級ではどんなことを勉強するのでしょうか? |
林 |
主に2つの柱があります。翻訳と会話です。
私は翻訳者・通訳者として実際に仕事していますから、
これからそのような仕事をする人・またしている人に私なりの技を伝授しています。
方法として、翻訳はときどきネットの文章を読んだり(最近はあまりしてないが)、翻訳の練習をしています。
翻訳もまた一種の慣れですから、繰り返し翻訳すれば文型ごとの翻訳のしかたがわかってきます。
中級クラスは短文の翻訳が良いのですが、上級クラスは段落ごとの翻訳をした方がいいと思います。
中国語のロジックを理解した上で翻訳するのが目標です。
また会話の重要性ですが、
たとえば私の場合は、よく話す分野の言葉なら覚えられます。
本を読むしかない言葉は忘れたり、記憶が不確実になったりします。
こういう体験から、教室で話す場を提供します。
みんなにそれぞれ近況などを話してもらいます。他の方は自由にコメントします。
中級クラスの場合は、すべての方が質問するように義務づけていますが、
上級者クラスはその必要はありません。
もちろん、雑談だけではなく、文法的な間違い、もっと自然な・難しい言い回しなどを教えます。とくに文型としての置き換えに留意して教えています。
中国語がわかっても日本語に置き換えられないのは留学経験者の弱点です。
そもそも置き換えは通訳の基本的ですね。 |
樋口 |
上級クラスでも会話が中心ですね。
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林 |
語学の習得にはIN PUT・OUT PUTの両方が必須です。
両者には複雑な関係があると思います。
IN PUTと言って、聴くだけで上達するわけではあります。
たとえばCDを聴いても、ぜんぜん頭に入らない方がいます。そういう方にとっては、時間を使っているだけで、IN PUTの量はそれほど多くないです。
その場合、OUT PUTの方法でやってみるといいかもしれません。
つまり、会話します。「OUTによってINを強化する方法が会話」だと考えています。
質問するために他の人の話を注意深く聞き、一遍話すと脳が活性化して、
IN PUTの量がはじめて増えます。
また話すことで自分が身につけた言葉のルール=(スポーツでいう)フォームを微調整することができます。
「人間は失敗から学習する」なので、間違いを通して、自分のルールへの理解の浅さに気がつくのです。
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樋口 |
生徒さんが主体的ですね。
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林 |
コーチングの本を何冊か読んだことがあります。
読んでから、気づいたのは、いい語学先生は「ティーチャー」でなく「コーチ」に近いですね。
スポーツ選手にとって、理論も必要ですが、そればかりではだめです。
しかもフォームの修正は本人が意識しないとできません。
語学先生の役割は、それを意識させることです。
また、マラソンの伴走のようなものでもあります。
私の経験からすれば、語学の学習は大変なことです。
天才でもないと、半年やそこらでマスターできませんし、私はそんな人を見たことがありません。
苦しいものだからこそ楽しく勉強する必要があります。
できるだけ楽しい、仲のよい雰囲気を作るのが最重要だと思っています。
そんな中で、生徒さんが主体的に勉強して行くのが理想的ですね。
まあ、そもそも、学生は「楽しさ」を求めて勉強しに来たのと、私が理解しています。
そして、学生がいちばん「楽しい!」と感じたときは、きっと
話が相手に通じた・自分の意思がちゃんと伝わったと実感できたときです。
生徒さんから「勉強になった」と言われるより「楽しかった」と言われたいです。
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樋口 |
今日は楽しかった。ありがとうございました。 |
林 |
私もたくさん話せて楽しかった。ありがとうございました。
お疲れ様でした。
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